ホクリク魅力ソン 2019 開催報告
元号が平成から変わって間もない令和元年の秋、石川県金沢市において、地域の課題を魅力に転換するアイデアソン「ホクリク魅力ソン2019」を開催いたしました。
「ホクリク魅力ソン」としては3回目(前身となる同様のイベントを含めると4回目)となる今回の「ホクリク魅力ソン2019」は、「地域の課題を魅力に転換する」という観点からテーマを「くらしのそばにある文化/産業とICT」とし、前回と同様に
- 1.令和元年11月23日(土) 「InputDay」 =セミナーとパネルディスカッション
- 2.令和元年12月14日(土) 「OutputDay」 =アイデアソン
という2日間に分けて実施しました。
1.「InputDay」 会場:ITビジネスプラザ武蔵 研修室1
InputDay は、セミナーとパネルディスカッションで構成しました。このInputDayの目的は、OutputDay=アイデアソンに向けて今回のテーマに関する前提知識を得ることと現状認識を行っていただくことです。学生と社会人、男性と女性、さまざまなバックグラウンドを持つ31名の方にご参加いただきました。
前半のセミナーでは、テーマに沿ったいくつかの分野の専門家を招かせていただき、まずはそのお話を伺います。
「行政」から、金沢市 都市政策局 担当部長兼企画調整課長 髙桒(たかくわ) 宏之 氏
「商店街活性化」から、片町商店街振興組合 理事 青年部長 石田真浩 氏
「伝統芸能」から、創作日本舞踊孝藤流 総師範 孝藤左近 氏
「農業」から、農事組合法人One 副代表 宮野義隆 氏
- (開会前の出演者打合せ)
- (ご登壇いただいた4者)
4者からそれぞれ「これまで取り組んできたこと」「現状」「課題」「これから取り組んでみたいこと、考えていること」などをご紹介いただきました。
続く後半は、パネルディスカッションです。4者にそのままご登壇いただき、ファシリテーターからの質問にお答えいただく形で、そして前回同様「slido」という参加者が質問や意見など思ったことをその場でスマートフォン等から投稿し全員で共有できる仕組みを用い、それを会場のスクリーンに投影しながら、進行しました。
- (ファシリテーター2人と、スクリーンに映っている「slido」)
登壇者が話している間にもリアルタイムで参加者からの質問や意見等がスクリーンに流れます。時にはファシリテーターから「今のお話について、早速画面にこういう意見が出てますけど、○○さん、どう思われますか?」と話を広げてすることもあります。「質問したい方は挙手してください」と言ってもなかなか上がらなかったりしますが、この仕組みならシャイな方でも大丈夫、気楽に議論に参加できます。
このInputDayで伺った貴重なお話を頭に入れ、OutputDayに向かいます。
2.「OutputDay」 会場:ITビジネスプラザ武蔵 交流室1・2
OutputDay では、InputDay の内容を踏まえながらメンターの指導のもと、課題を魅力に繋げるアイデアを創出します。いわゆるアイデアソン、本番です。
当日は、18名(社会人10名、学生8名)のご参加をいただき、4つのチームに分かれて、行いました。
スケジュールは、
InputDayの内容を振り返り
アイスブレイク
(昼食)
ワークショップ1 ターゲット・未来像
ワークショップ1 発表
ワークショップ2 サービス・全体像
ワークショップ2 発表
(休憩)
ワークショップ3 再検討&具体化
ワークショップ3 発表
ワークショップ4 まとめ
プレゼンテーション準備
最終プレゼンテーション
審査と結果発表、表彰式、記念撮影
このような流れです。
- (開始前の関係者打合せと、開始前の会場全体の様子)
まずは3週間前に行われたInputDayの内容を簡単に振り返り(*InputDayに参加できなかった方への対応でもあります)、初対面の人同士でも打ち解けるための「アイスブレイク」として
「同じチームのメンバーに共通する点を探そう」
というゲームをしました。その共通点がレアであるほど高評価とします。
- (OutputDayのファシリテーター、情報通信研究機構・宮地)
- (InputDayの振り返り)
一種の「ゲーム」ですので時間制限を設け、その中で各自が自己紹介をしつつ「出身地」や「年齢」など一般的なことから「実はこういうことができます」といったことを話し合って、チームメンバーに共通することを見つけてもらいます。そして時間が来たら発表。
拍手の数で決めた最も「すごい」と思われた共通点は…あるチームの「全員が石川県以外の出身者である」でした。…社会人も学生もいて年齢もバラバラなのに、ということを考えるとなかなかすごい偶然です。
- (「全員が県外出身者」なチーム)
ちなみにInputDayで講師を務めてくださった孝藤左近さんがご見学に来られたのですが、急遽、欠席者が出たチームに入るという事態も。
さて、そうして打ち解けた雰囲気になったところで、本格的にスタートです。
今回の「ホクリク魅力ソン2019」のゴールは、このシートを完成させること。
基本的には例年同じです。ただ、これも毎回ですが、いきなりこのシートを見ても「どうしたらいいの?」となると思います。
大丈夫です、上に書いたスケジュールのとおり、順番に、考えていきます。各チームにはメンターもついています。
まず最初におおまかに自分たちのチームの方向性を決めます。この時点では特に制限は設けません。各自が持っている問題意識から、なにかしらターゲットと未来像を考えます。
ペンや付箋、ノートなども使って思っていることをみなに共有しつつ、話し合い、考えて、また話し合い、また考えていきます。イベント最後にはチームごとにプレゼンテーションをしますので、どのようなプレゼンテーションをするかもイメージしつつ、だんだん形にしていきます。
昨年は「スポーツ」という1つのくくりがありましたが今回はInputDayで複数の分野の方にお話を伺っており、なにをターゲットにするかについて特に制限は設けていないこともあって、各チームが着目したところはバラバラでした。もちろん、それぞれのメンターによってもサポートの仕方に違いが出ます。
最後のプレゼンテーションだけではなく、途中にも「発表」を挟んでいるのは、自分たちが進めていることを人に話すことで客観的に確認することと、他のチームがどのようなことを考えているかを知ることでもあります。
何度か書いているとおり、各チームは社会人と学生、男性と女性の、混成チームです。(*実行委員会として、あえて、そうしています)年齢層も今回は18歳から54歳までと幅広く、職種もさまざま。
普段の生活ではなかなか接することのない人同士、ということもあり、打ち解けたあとは(休憩時間の雑談も含めて)盛り上がり、各チームからそれぞれユニークなアイデアが出てきました。
そして迎える、最後のプレゼンテーション。
スタイルは自由、お任せです。主催者側から形式の指示しません。決まっているのは時間だけ。じっくり話す形でもいいし、お芝居をしても構いません。ツールも自由。大事なのは「そのアイデアの良さを伝えること」です。
全チームのプレゼンテーションが終わり、審査員による審査を経て、審査員を代表して北陸先端科学技術大学院大学の篠田陽一教授より、各チームそれぞれに講評を伝えつつ、賞状が授与されました。
- (今回審査員を務めていただいた方々)
- (代表して総評を述べる篠田先生)
-
【優秀賞】
チームD「ゴレンジャー」 -
【スーパーマッシュアップ賞】
チームA「SUSHI」
-
【ICTテクノロジー賞】
チームB「カラフルめがね」 -
【ハートヒット賞】
チームC「県外」
そして最後は、全員で、記念撮影!
アイスイスブレイク(自己紹介)、ワークショップ、プレゼンテーション、そして審査・表彰式…、あっという間の1日でした。
この「ホクリク魅力ソン」は次年度も開催を検討中です。
開催決定の際には公式サイト等で案内いたしますので、ぜひご参加をご検討ください。
ありがとうございました!
各チームから出たアイデア、概要を、下記のとおり紹介させていただきます。
これらに興味をお持ちになり、実現したい/する、製作したい/する、というご意向をお持ちの方は、ホクリク魅力ソン実行委員会までご連絡くださいませ。
○チームA「SUSHI」
コンシェルジュデバイス&アプリと地域通貨(SUSHI)
目的地までの付加価値サービス、店舗、文化・体験施設、観光スポットの豆知識を行政、民間と連携し、提供することを目的に、「住民と観光客がお互いHappyとなるコンシェルジュデバイス&アプリ“まいどさんプレミアム”」を制作する。
また、キャッシュレス、予約ファストパス、ポイントサービス(地域通貨SUSHI(単位「貫」))を取り入れ、また、コンシェルジュデバイスに行先指定し走行中の路線バスに向けると希望の行先のバスか表示され、タクシーでは、運転手にデバイス提示するだけで、目的地に移動可能。インバウンド、障害者にも対応した易しいサービスを提供する。
○チームB「カラフルめがね」
金沢らしさ(おくゆかしさ)をICT化 感性のコミュニケーション
「『金沢シムシステム』〜IoTからIoP〜」
金沢の奥ゆかしさを見える化する、ということを目標に、同意の上で店舗等を訪れる人々のバイタルデータ(体温、血圧、脈拍、表情など)を“感”情報として取得、シティカード(金沢キャッシュ)として活用する金沢シムシステムKaaS(kanazawa as a Survice)を提案。
また、IoTの次の概念として「IoP(Internet of Person)」を提唱し、買い物、食事予約、決済、移動を上記サービス1つで実現する。
○チームC「県外」
引きこもり、障害者、オジサン、オバサンと商店街のマッチング提案
「TATEMACHI CYBER DISCO」
引きこもりやオタクと、コミュニケーション能力の高い中高年男女(オジサン、オバサン)をマッチングさせ、商店街の活性化を図ることを目的とし、あまり中心市街地に出ないであろう方々(*あくまでイメージです)を竪町商店街に誘客することで商店街の活性化を図る。
1980年代にブームであった「ディスコ」に着目し、オジサン、オバサン世代に対してはリバイバル感を、引きこもりやオタクといった「おそらくそこには来ないであろう」層には、各々の自宅からディスコに設置したロボットをVRで体験する。
(*竪町商店街:金沢市中心部にある商店街。)
○チームD「ゴレンジャー」
目的地までの新しい発見(満足感)を伝えるナビ
「利用者サービスを付加したナビゲーションシステム(Lost)」
現在利用されているナビゲーションシステムは、基本的に目的地までの最短ルートを案内するだけであるが、その移動そのものに付加価値をつけ楽しもう、というもの。
GPS、個人情報などをリンクし、目的地に行くまでを楽しませるルートナビゲーション、経路近傍にある店舗情報など個人の嗜好にあった情報を音声で案内する。
その他、役立ち情報として、気象情報から、「もうすぐ雨が降りますよ」といった情報を配信し、雨宿りできる店舗情報を配信するといったことも可能とする提案。